8.災害の教訓を伝える「被災地責任」(2013年 ピースボート災害ボランティアセンター)

ピースボート災害ボランティアセンター

2013年6月25日 ピースボート災害ボランティアセンター 小林深吾Part8

東日本大震災後、石巻へ派遣され災害復興活動に従事してきたピースボートの小林さん。被災地には経験を残していく責任があると言っています。さらに、世界から見ると日本は防災先進国なので、被災地だけでなく震災で得た教訓を積極的に伝えて行くことは、被災地に限らず日本全体の課題でもあります。

被災地には経験を残していく責任がある

被災地責任

もう一つ一緒に考えたいと思うのが、「被災地責任」という言葉があります。僕がすごく尊敬する人の一人で、日本財団の黒澤司さんという方がいます。彼は災害が起こるとその最前線に行って、被災地の支援活動をされる方なんです。

彼のブログの中でこういう言葉を見つけたのです。「防災・減災についての技術・学問は、過去の災害の事例から多くのことを学び、検証し、その教訓を次につなげていく。被災を受けた地域は、自らが経験したことをしっかりと記録に残し次につなげていく、被災地に課せられた責任がある。その記録が次の被災地の復興への道しるべとなる」と。

日本は災害大国です。阪神淡路大震災にしても、中越地震にしても、いろんな所で地震や水害が起こります。それが起こるたびに、なぜこの建物が壊れてしまったのか。「そうであれば耐震構造を直そう」とか、「そうであればお互い助けられるような取り組みをしていこう」とか、そういう学びがその都度その都度あって、その被害がどんどんなく少なくなっていく。被災地には、自分たちがどういうかたちで何を経験したのかを残していく責任があるのだと言っていると思います。

世界から見ると日本は防災先進国です

世界から見ると日本は防災先進国です

これは大きな地震が起こったとか、小さな地震が起こったというマップですが、日本のほかにも環太平洋といわれる所は、地震がたくさん起こる地域です。日本は特に地震も、水害も、いろんな災害が起こる地域なのです。日本の持っている技術や仕組みは、多分これから世界にもっと必要になるであろうといわれています。

仲間の一人が、このあいだスイスのジュネーブという所に行きました。そこで災害に関する国際会議みたいなのがあったのです。日本はどういうふうに思われているのかというと、ここではあえて「世界から見ると」と書いたのですが、日本は災害の大国であり、防災の大国であるといことです。

災害が起こるからこそ、その災害に対して防災意識や減災意識がとても高い。ただ、それはやはり技術が、テクノロジーがあるから、お金があるから、という見え方がされています。なので、基本的に日本は災害に強い国で、災害はあるけれども、防災に対する先進国だと思われています。

でも、今回その災害の防災大国である日本であるにもかかわらず、これだけ大きな被害が起きてしまったということも事実としてあります。なので、災害が避けられないものだとしたら、災害が起こったときに減らす在り方はどうしたらいいのかということを考えなければいけません。それが自助だったり、共助だったり、お互いが助け合うことが必要になってくるということが、これから世界の防災で日本のメッセージとして大事なのかもしれません。

被災地の経験を積極的に伝えましょう

被災地の経験を積極的に伝えましょう

一方で、先ほど「被災地責任」という話をしました。僕は、それは東北の皆さんが、もしくは東北の皆さんだけが負うものではないと思っています。というのは、2011年、世界で一番支援を受けた国だった日本は、その責任を東北の人たちだけに押し付けていいのかと思ったりします。

もちろん東北の人たちが体験したり、経験したことは残していく必要はあります。それを伝えたり、形にしていくのは、世界に発信するという意味では、日本の被災地以外の人たちにも責任があるのではないかと考えています。

例えば、石巻のユースアンバサダーみたいな感じで、地球一周の船旅に2人の石巻圏域、女川の人と石巻の人に乗っていただいて、いろんな国で自分の経験や体験を話す。上から偉い人がいろいろなことを話すこともすごく大事ですが、実際体験した人が個人のつながりとしてそれを伝えていくこともすごく必要だと思っています。

ちなみに2015年3月に、仙台で第3回国連防災世界会議が――タイトルを見るとすごく大きな名前なんですけど――行われるそうです。多分、何万人も参加するものです。世界中からいろいろな人が来て、防災会議みたいなのをやります。10年ごとにそれが見直されていて、2005年のものが2015年、2年後に見直しされます。

僕はそれも、国際的な会議で、偉い人たちがしゃべっているだけの場所ではあまり面白くないのではないと思っています。例えば石巻専修大学の皆さんが、今までかかわっていた仮設の方だったり、ここでの災害の拠点として果たした役割だったり。

あとは2015年のときに「こんな支援、もしくはこういうパートナーが一緒にいてくれたらもっと助かるのに」とか、「こういうアイデアがあるんだけど」みたいなことを大学生がいろいろな人と議論できたら面白いのではないかと思います。英語ができるかどうかはあまり関係ないです。できなかったらできなかったで、英語ができる人を連れてくればいいだけの話なので。もし、具体的にやりたいのであれば、やってみる可能性はあると思います。

やっさん

東日本大震災の仮設住宅支援、復興起業家育成に関わってきました。大学では、震災復興を考える講座やワークショップを実施しています。ここでは、復興ボランティア学講座の記録をまてめて、公開しています。

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やっさん

東日本大震災の仮設住宅支援や復興起業家育成に10年間携わってきました。現在は震災復興に関する講座やワークショップを実施しています。ここでは、復興ボランティア学講座の記録をまとめて公開しています。

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