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2013年6月25日 ピースボート災害ボランティアセンター 小林深吾Part9
東日本大震災後、石巻へ派遣され災害復興活動に従事したピースボートの小林さん。復興とは人生の再構築の過程で、重要他者との出会いが重要な意味を持つそうです。復興に限らず、他者との出会いは人生を豊かにする方法なので、誰に出会うかが大切だと言っています。
復興であろうと、平時であろうと他者との出会いが人生をつくります
3つ目の質問で「大学に入学してから大切だと思える人との出会いはありましたか。またはありそうですか」という質問をしました。人によっては「彼女ができた」「彼氏ができた」みたいな人もいるかもしれないですけど。これはあえて聞かないので、それぞれの胸にとどめておいてください。
なぜこんな質問をしたかというと、このあいだ「復興って何だ」という企画を、ハイライフ研究所と渋谷大学が東京で行いました。「復興」というと、すごく漠然としていますよね。「復興って何だ」と聞かれたら、それぞれ答えは違うと思います。渋谷大学の友人が教えてくれた、同志社大学の立木先生はすごく面白い研究をされています。ネットにも動画が上がっているので「復興って何だ」と引くと出てくると思います。
被災者の人たちの生活復興調査というのをやりました。それは、阪神のときに10年間、「復興の実感をどうやって被災者の人たちは感じるのか」という調査をしていたのです。その結果、面白いことが分かりました。一つは、自分が震災の影響がなくなったと感じるためには、住む場所があることと、なりわいとして仕事があること、それによって、安心感が持ててストレスがなくなっていくというのが、これが5年目の結果です。
それから、その中でもう一つ大事だといわれているのが、つながりがあること。つながりがあって、かつ重要他者との出会いがあること。それがその人の復興感を高めるんだということです。5年後の結果の後、10年後の結果をやったとき、住まいとかが落ち着いた後、10年後にはよりそのつながりや、重要他者との出会いがもっとその意味を持ってくるという研究結果だったのです。
何を意味しているかというと、震災に遭って、自分の家族を亡くしたとか、家をなくした、友人を亡くしたというのは、もう取り返しがつかないわけです。それはもう二度と戻ってこないもの。だけれども、震災に遭った経験をどういう意味で自分の中で再構築するのかということが大事なのではないかということ。
例えば、「震災に遭ってこんな人と出会えたから、私はこの震災に意味があると感じられる」とか、そういう話です。その人が言うには、「復興とは人生の再構築である」と、もう元に戻れないので、起こってしまった意味をどうとらえて、どういう人生をこれから誰と歩んでいくのかとか、どういう大事な出会いがそこにあったのか、というのが大事なのではないかと言っています。
僕が思うには、それは震災にかかわらず、人生を面白くする、豊かにする方法なのかもしれないと思っています。例えば、僕がパレスチナのおじいちゃんと出会ったとき、僕にとってみたらパレスチナなんてニュースの世界ですけど、そのおじいちゃんと出会うと自分の中でそのとらえ方が変わったり、価値観が変わっていくわけです。
石巻に来てからも、例えば黒澤さんという方と出会ったり、街中で「これからまちづくりをやっていきたい」という方と出会ったり。そういうかたちで、その出会いがまた自分の人生にすごく影響を与えるわけです。そんな出会いが、きっとこの大学の中であるといいのかなと思っています。
誰と出会って何をするのかというのが大事です
ピースボートがつくれるかもしれない、そんな出会いのきっかけを紹介したいと思ったのですが、あまり時間がないので。裏表の紙をお渡ししました。「ピースボートでできる活動」という紙です。ピースボートセンター石巻で参加できる活動。スライドにはざっくりとしか書いていませんが、「イマ、ココプロジェクト。」というのは、実際に浜に行って、浜の漁師さんたちと浜の生活をしながらお手伝いをするというものです。
また、いま7,000戸の仮設住宅に「仮設きずな新聞」という情報誌を配っています。それを取材して記事にしたり、配布したり、印刷とかを手伝ってくれる人。あとは、コミュニティースペース、駅の近くの立町という所で行っているのですが、そこで運営のボランティアとか、あとは外から来る人たちの交流のプログラムをこれから週末に作っていきたいと思っています。
そんなところにかかわってもらえるといろいろな人と出会えるので、ぜひかかわってください。船もやっていますので、興味ある人はどうぞ。
というのが、皆さんに聞きたかった3つの質問です。それぞれ「大事な人がいる人は、その人を大事にしてください」というのと、「また新しい出会いがあるといいですね」と思っています。僕がここに立っているのは、偶然かもしれないし、必然かもしれません。
たまたま石巻という場所にたどり着いたという言い方もできるし、国際交流と災害支援をやったから石巻に来て、皆さんの前で話しているという言い方もできるかもしれません。誰と出会って何をするのかというのがきっと大事ではないかと思っています。
小・中・高を経て、大学で今ここにいるわけです。これから長い人生ですから、いろんな人、この20代でどんな人と出会うのかというのは分岐点になる瞬間かもしれません。特に東日本大震災は、関東大震災以上に歴史に残り、教科書に載っていく出来事だと思うのです。
その「ど中心」に、いま皆さんはいて、これから10年後20年後、もし子供ができたとき、社会人になって大人になったときに、「そのとき何をしていたの」と聞かれる場面があるかもしれません。それを自分なりに、「この当時、自分はこんなことをしていたんだよ」ということを話せたらいいなと思っています。以上になります。ありがとうございました。
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