8.オモシロ人が街にいた(2013年 ISHINOMAKI2.0)

ISHINOMAKI2.0

2013年5月28日 ISHINOMAKI2.0 松村豪太 Part8

東日本大震災で被災した石巻を面白い街に変えるため、ISHINOMAKI2.0の活動を始めた松村さん。震災後は生きるために、いままで疎遠だった街の人たちと話すようになりました。話しているうちに石巻には面白い人がたくさんいることわかってきて、そこから新しい展開が始まりました。ISHINOMAKI2.0は地域の内外の面白い人を媒介しながら、さらに新しい取り組みを増やしていきました。

本当に貴重なものは、すぐ近くにあった

被災したかめ七呉服店
被災したかめ七呉服店

この町が嫌いだったと言いました。外部の人との出会いがすてきだったと言いました。けれども、実は本当に貴重なのは、すぐ近くの人との出会いだったのです。町の人との出会いから本当に素晴らしいものが得られました。

今まで本当に恥ずかしかったのですが、町にどういう人がいるか分からなかった。あまり会話をしていなかった。人と人との距離が遠くてコミュニティーが希薄だったなんて言いましたけれど、実は本当にそういうふうに人と人との距離を遠い状態にしていたのは、僕みたいな存在だったのです。

でも震災を契機に、話さないと生きられませんから、「元気ですか」とか「こういうものを持っていませんか」と相談したりするようなった。そうやって話してみると本当に素晴らしい、懐が深くて面白くて、単にいい人だけじゃなくて、すごく面白い人がたくさん町にゴロゴロしていたんです。

被災したかめ七呉服店のご主人も、実は美大卒で、すごい雑誌のコレクターなのです。『nonno』とか『anan』『POPEYE』なんかも創刊号からコレクションしていて。「マニア買い」と言いますか、2冊ぐらい買って、1冊は保存用に取っておくようなヲタクだったのです。それが建物の中で非常に膨大な資料になっていて、震災前から奥さんに「何とかしなさいよ」と言われていました。

震災でガタガタになってしまって、いよいよ捨てなければいけないのかなと考えていました。たまたまそれを雑誌協会の方が見て、「いや、とんでもない。これはすごいコレクションですよ、すごい価値がありますよ」ということで、雑誌コレクションをみんなが閲覧できるようにしてコミュニティースペースを作りました。

三位一体の事業としての「コミュニティカフェ・かめ七」

コミュニティカフェ・かめ七
コミュニティカフェ・かめ七

これなんかは、われわれにはお金がないので、お金は雑誌協会に出してもらう。われわれには場所もないので、場所はこのかめ七呉服店という呉服屋さんにお店の一角を提供してもらう。われわれはアイデアだったり人をつないだりということをする。そういう三位一体の事業として、「コミュニティカフェ・かめ七」というスペースができて、今でも営業されています。これはすごく面白いので、ぜひ行ってみてください。

われわれの『VOICE』というフリーペーパーもとてもいいものだと思うのですが、その前から石巻はフリーペーパー文化が結構盛んで、『ZERO』とか『ひたかみ』とか、いろいろなフリーペーパーがあるのです。かめ七には創刊号からありまして、創刊号には今となっては結構立場がある、偉い、50代前半ぐらいになっている人たちが、ホットパンツをはいてテニスのラケットを持ってにこっと笑っているという、なかなか人に見せられないような写真がたくさんあります。すごくいろいろな脅迫の材料がここにはたくさんそろっていますので、ぜひ行ってみてください。

石巻経済新聞というウェブ新聞を発行したり。皆さんもワンセグ放送をやっていらっしゃいますけど、われわれもラジオ石巻さんと共同で、「RealVOICE」という番組を毎週水曜日、昼12時半から放送しています。映っているゲストの方が、今この教室にいらっしゃいますけれども。このフリーペーパーが「町の人の声を拾う」というコンセプトの雑誌なのですが、その音声版ということでこのラジオ番組を作っています。さらに、2.0エクスカーションという学びのツアーを行ったりもしています。

IT産業を生み出す「イトナブ」というスペース

IT教育の場としてのイトナブ
IT教育の場としてのイトナブ

「イトナブ」というITの拠点を作りました。われわれのメンバーの古山というチャラ男が、石巻工業高校出身のITディレクターなんです。最初われわれメンバーがそうやっていろいろな人、建築家だったり、大学の研究者だったりが被災した旅館の上に集まったときに、「絶対ウェブ発信が必要だよね。

でも、ウェブ知識がないわけではないけれども専門家に手伝ってほしいよね」ということで、メンバーの一人がTwitterで、「今、こういう2.0という熱いことをやろうとしているんだけれど、誰か手伝ってくれないか」とツイートしたら、その2時間後ぐらいに「俺やります」とリツイートをくれた人がこの古山という人間で。今一緒にやっているという状態です。

彼は、単にボランティアではなくて、ITの産業を生み出そうということで、この「イトナブ」というスペースを作りました。普通にアプリ開発やホームページ制作をお仕事として受託して、お金を稼いでいます。

また、IT教育の場として地元の高校生を呼んで(主に工業高校の生徒ですけれども)、彼らに、前面に大きな画面がありますけれども、Googleハングアウトという10人まで参加できるインターネットテレビ会議システムなんですが、そこにトップランナー的なプログラマーの方がいつも出られるようにして、教えてもらいながらやっています。

本当に最初は何の知識もない、アプリ開発について素人だったのですが、去年アプリ甲子園というイベントで全国大会に出場してしまいました。どういうソフトで出場したかというと、「無限ティッシュ」という、何かのパクリみたいなアプリなのですが。やってみると非常に残念な、ただひたすらティッシュをつまんで引っ張り出すというアプリです。

今ここに映っているのは、今日は筑波大学に行くと言って、「行きたいんですけれども」と言い訳していましたけれども、これが地元大学の4年生、津田君という人間です。彼も最初、全然ITの知識はなかったのですが、その古山という人間に「スナックに連れて行くから」と口説かれて、何回か手伝っているうちにすっかりはまってしまいまして、ここの番人みたいなことをしています。高校生たちのお世話をして。

もちろん彼もかなり、ゼロからアプリが作れるようになっています。この津田くん、フィッシュと呼ばれていますが面白いのです。フィッシュ特集になっていますけど、ばかなやつです。でも、こんなやつが今こうやって、逆に今度は高校生たちを教える立場になっています。

動画Part8( ISHINOMAKI2.0 松村豪太)

やっさん

東日本大震災の仮設住宅支援、復興起業家育成に関わってきました。大学では、震災復興を考える講座やワークショップを実施しています。ここでは、復興ボランティア学講座の記録をまてめて、公開しています。

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やっさん

東日本大震災の仮設住宅支援や復興起業家育成に10年間携わってきました。現在は震災復興に関する講座やワークショップを実施しています。ここでは、復興ボランティア学講座の記録をまとめて公開しています。

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