12.価値はなくとも、価値はつくるもの(2013年 ISHINOMAKI2.0)

ISHINOMAKI2.0

2013年5月28日 ISHINOMAKI2.0 松村豪太 Part12

東日本大震災で被災した石巻を面白い街に変えるため、ISHINOMAKI2.0の活動を始めた松村さん。石巻に魅力を感じて定住を望んでいる若者に、住居のあっせんに取り組みます。再開発の網の目からもれ、被災したけど取り壊せない。そんな街中にある住宅に目をつけ、それを自分たちの手で改修することで新しい価値をつくりだしました。

再開発の網の目から漏れた、使えない物件はまだまだある

2.0不動産

再開発の網の目から漏れたような物件もたくさんあるのです。今、町の中の建物はどんどん「公費解体」、ただで壊せるので解体が進んでいます。皆さんも行ってみると目にすることがあると思いますけれども、ビルの壁に赤いスプレーで、アルファベットとか数字が殴り書きされています。それは、言ってみれば建物の死刑宣告で、このあと解体を待っている建物なのです。

その一方で、解体申請を出せていない方もいます。その方は、せっかくただで壊せるのにどういう理由で解体申請を出していないのでしょうか。使うにも使えないような、津波の被害を受けているのです。そういう方はなぜ解体しないのかというと、自分のお父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、先祖からずっと住んできた建物で、壊すのは忍びなかったりするからです。

もっと現実的な理由では、建物を建てたときには周りに、接道という道路があって合法的な建物だったのが、周りにどんどん建物が、戦後の混沌(こんとん)としたときに開発が進んできて、今その建物が道路に面していないなんてことも。そうすると「既存不適格」といって、建物として存在してはいけないのです。そういう場所を解体してしまうと、もうそこに建物を建て直せないのです。そうすると、もう土地を売るしかないのです。

ただ、土地を売るというのも、なかなか石巻みたいな「田舎町」と言ってしまいますが、古い歴史を持った町では近所の目というのがいろいろありまして、土地を売るのが非常に世間体を気にするのです。なかなか売れない。そうすると、使い途のない土地を抱えてしまうことになるので、壊すに壊せない建物が意外とあるのです。そういうのを生かせばいいのではないかとわれわれは思いました。これもデザインだと思います。

面白くリノベして、ボロ家を価値ある建物にしました

松村豪太

そういった課題を抱えたオーナーさん。物件はあるけれども、既存の、普通の不動産屋では取り扱ってくれないだろうというような物件を、仲間たちと手作りで改修します。そこではちょっと面白く。決してお金はかけられないので、立派なしつらえにはできませんが、壁一面をシックな赤に塗ってみたり、あるいはもともと畳のぼろい平屋だったところを、区切ってシェアハウスとして使えるようにする。

そうすると、例えばオーナーさん的には、ぼろ屋だし月2万円取れればいいだろうと思っているような物件があるとします。そこを仲間と改修する。改修する人間は、建築に興味を持っている大学生に参加してもらって。もちろん教えるのはプロの建築デザイナーです。そういう改修の体験自体が一つのアトラクションとして楽しめるようなしつらえにします。

もちろん材料費はかかりますが、最低限の材料費でぼろい平屋をシェアハウスに造れるのです。もともとオーナーさんが2万円で貸そうとしていたところを、2万円、2万円で2人に貸せるようになる。浮いた2万円を改修の材料費に回すという。そういったたくらみを、この2.0不動産では実際に動きだしています。

あるいは、ライフスタイルのカタログも2.0不動産のやっていることの一つです。先ほどのひろにいのライフスタイルもそうだと思いますが、自分たちでセルフリノベート、手作りで好きなようにおしゃれに改築して、決して立派ではないけれども満足度が高い生活が送れるような、ライフスタイルを紹介して住んでもらう。

そういう、今までの既存の不動産屋さんの情報、「駅から徒歩何分」とか「バストイレ別」とかじゃない、カタログに載っていない、新しい価値観で住んでもらうようにする。そういったのも2.0不動産が目指しているところです。

動画Part12( ISHINOMAKI2.0 松村豪太)

やっさん

東日本大震災の仮設住宅支援、復興起業家育成に関わってきました。大学では、震災復興を考える講座やワークショップを実施しています。ここでは、復興ボランティア学講座の記録をまてめて、公開しています。

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やっさん

東日本大震災の仮設住宅支援や復興起業家育成に10年間携わってきました。現在は震災復興に関する講座やワークショップを実施しています。ここでは、復興ボランティア学講座の記録をまとめて公開しています。

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