12.被災地の「自立」とは何か(2013年ワカツク)

ワカツク

2013年5月21日 ワカツク 渡辺一馬 Part12

普段は仙台で若者の社会参加と人材育成を手がけている渡辺さん。東日本大震災では裏方として、行政とNPOや、ボランティアと現地のニーズをつなぐ仲介役もしていました。最後に、被災地の自立のために、遠い課題を追うふりはやめて、目の前の課題に手をのばすこと、そして、他者の力になることで、自分がハッピーになれる仕事をすることが大切だと指摘しています。

「いいんです、僕たち幸せだから」って言えれば、東北は良くなる

東北の自立

今後のことで皆さんに一緒にお考えいただけたらと思っているのは、東北が自立をするために、私とか私たちができることって何だろうということです。

僕最近、「東北の復興はどうですか」とか「東北は何をしたら復興しますか」という質問に対しては、基本的にはこういうことで返します。「自立です」と。「もう少し詳しく」と言われると、「君たちは年収200万だから不幸だよね」と言われても、「だから?」って言い返せたら復興です。

なぜか東京から、東京に限らないけど、どこかの怪しい基準の中で、その基準に満ちていないので東北は不幸だから、そういう人たちに「ぜひそこの基準まで来てほしい」と言うのは、僕はちょっとずれている気がしています。

結局そこの、なんていうかな、ジレンマから抜け出せない。豊かになろうと思っていろいろなことをして、結果的には追いつけず。追いつくためにもっと無理をして。無理をして、無理をして、人は減り。よく分からない施設は押し付けられ、結果こうなる。一生懸命頑張ったはずの私たちに対して、この「国」というシステムは、この中にも経験した人がいると思いますけれど、あのつらい数カ月間を僕たちに強いました。今もかもしれません。

「国をつくり替える」なんて僕は言いませんけれど、せめて東北に住んでいる人たちが「いいんだよ、僕たちこれが幸せなんだから文句言うな」というか、別に気に掛けくれなくてよいと。魚を捕り、小さい畑でものを作って、自給自足プラスアルファの仕事をしていて何が悪いんだと。

そういうのが悪いと勝手に思い込まされているというのが、僕はまだふに落ちていない……、きっちり言葉はできていないんだけど、そういうことが新しい言葉で語られるようになって、「いいんです、僕たち幸せだから」って言えるようになったら、東北は良くなるのかなと思っていました。

遠い課題を追っているふりをやめてください

そういうことをするために、皆さんにぜひお願いしたいこと。これは僕自身に、もう一回自分自身に約束することでもあるんですけれど。「遠い課題を追っているふりをやめてください。目の前で起きていることに、目と手を差し伸べてほしいです」。

ハウス食品が昔やっていた、「ハウス名作劇場」というアニメが昔ありました。今はもうないんですけど。そこで、とある主人公の女の子が、アメリカの開拓民か何かなのか、まだアメリカが勃興(ぼっこう)期の頃です。とはいえ、金持ちのお姉さま方はいて。そのお姉さま方が、目の前にホームレスがいる町に住んでいるにもかかわらず、そのホームレスには「汚い」とか「あんなやつは出ていけばいいのに」と言っています。

その一方で、募金活動をして、「アフリカの恵まれない子供たちのために、私たちは学校を造りたいから募金してください」と言っているおばさんたちを見て、主人公の女の子は「何であの人たちは、見たこともない子供たちのことを何とかしようとするのに、目の前のホームレスには手を伸ばさないんだろう」みたいなことを言った、アニメの一シーンがあって。僕、それがすごく、当時ビビビッときまして。今でもそれが自分の中の行動の原則になっています。

自分がすごくハッピーになれることをやっていきましょう

渡辺一馬

古い言葉だと「一隅を照らす」みたいな話なんですけど。まずは目の前のことをちゃんとやりましょうと。みんなが目の前のことをやれば、世の中明るくなるに決まっています。今日、ここにいる学生さんはすごく多いので、僕はほかの大学で就職系の講義をよくやっているのですが、そこでお話しすることを最後、イメージ付くかなと思ってお話しをします。

仕事って、本当は誰かの役に立って、役に立ったからそのご褒美として僕も食べさせていただけるわけです。人を幸せにしたから、自分も幸せになる権利を持つのであって。でも、仕事って皆さん思っているのは「自分が食っていくために何かをする」だと思っていて。それは逆です。

いま皆さんは働いていないから分からないかもしれないけど、世の中の働いている大人たちって、誰のためになっているか分からない仕事をして、自分も不幸になっているから、誰も幸せになっていないわけです。それは経済しぼみます。

だからぜひ皆さんは、目の前の困っている人なのか、目の前で自分が何とかしたいことなのか、目の前の自分がこうやったらすごくハッピーだということを、どんどんやっていただければと思います。

少し時間がオーバーしましたが、私からのお話しはいったんここまでにさせていただきたいと思います。ご静聴ありがとうございました。(終了)

動画 Part12(ワカツク 渡辺一馬)

やっさん

東日本大震災の仮設住宅支援、復興起業家育成に関わってきました。大学では、震災復興を考える講座やワークショップを実施しています。ここでは、復興ボランティア学講座の記録をまてめて、公開しています。

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やっさん

東日本大震災の仮設住宅支援や復興起業家育成に10年間携わってきました。現在は震災復興に関する講座やワークショップを実施しています。ここでは、復興ボランティア学講座の記録をまとめて公開しています。

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