もくじ
2013年6月11日 TEDIC 門馬優 Part10
東日本大震災後の石巻で教育系のNPOを立ち上げた門馬さん。合格した教員採用試験を蹴って、TEDICの活動に全てを賭けることに。学校が本来提供すべき機能は無償で提供するとの考えから、活動の柱である放課後教室は無償で実施しています。教室に来る生徒たちは、勉強だけなく、相談相手を求めてきたりと、自分の居場所として活用しています。
TEDICはこんな活動をしています
すごく暗い話をずっとし続けてしまったので、ズーンという雰囲気かなと思います。ここからは、今のTEDICという、僕がやっている活動が、どんなことをなのかを明るく話して、何かしらヒントになれば、うれしいなと思いながら話をします。
一大決心だったのです。実は教員採用試験の合格ももらっていて、先生になるかどうかギリギリまで迷いました。でも、やっぱりそういう子たちの力になれたらという思いと、自分の中でそれをしないと後悔するなという気持ちがあって、今の選択をしました。ただ、収入面では、かなり絶望的な状況で、ボランティアさんのご家庭の野菜を食べたり、米を送ってもらったりして、何とか生きているような状況です。
TEDICが取り組んでいること
今のTEDICではこういうことをやっています。先ほどのような子供たちが中心になるのですが、学習支援と、あとは居場所づくりです。支援を兼ね備えた機能として「放課後教室」というのをやっています。昨年度は6カ所で実施をして、今年度は全部で7カ所実施している状況です。それぞれの場所によって、来ている子供たちの雰囲気とか求めているものもバラバラだったりします。
それこそさっきのような、すごく荒れていて、気持ちをどこかにぶつけないとどうしようもないという子もいます。いま不登校がちで、お母さんもどうしたらいいか分からないで困っているという子もいます。ただ純粋に勉強をしたいと思って来ている子供たちももちろんいます。この放課後教室ではそれぞれの子供たちにとって何がベストなのかというのを常に考えながら、一人一人に合ったかたちを考えて活動をしています。
TEDICの仕組みとしてはこういう感じになっています。左端のほう、今はサークル活動みたいなことでやっているのですが。専修大学の学生さんを含めて、みんなで毎週楽しくレクリエーションをやったりしているサークルがあります。あとは、そういうのに参加していないけれども、純粋にうちに参加したいという学生さんもいます。ほかの大学の学生さんとか、時には高校生もいたりします。
今の事業の柱は2つの事業で、一つはさっき言った放課後教室事業。もう一つはプレーパーク事業です。うちの場合は、そういうサークルとか、大学生とかに申し込みをしてもらって。申し込みをしてくれた人と僕も一緒に学びながら研修をして。そこからさっきの放課後教室の現場に出ていったり、プレーパークに参加をしたりということをやっています。プレーパークのほうは、研修というよりどちらかというと純粋に子供たちと遊んでほしいという思いがあるので、一般募集をしていきたいと思っています。
放課後教室は無償でやっています
放課後教室事業の生徒さんは、授業料負担なしでやっています。それには今までずっと話をしてきた僕の思いがあります。小中学校は授業料無償ですが、無償の中で保証されるべきものが、学校とか大人の事情で保証されていない。それによってはじかれたり、脱落してしまうかもしれない子供たちがいる。
その子たちが、自分は何とか生き残りたいと思ってプラスアルファでお金を払うというのは、何かおかしな話だと思っています。原因のある側がお金を払わないで、原因もなく、ただ奪われてしまっている側がお金を払という、その状況がかなりおかしいと思っているのです。
放課後教室は、宿題を見てあげたり、学校で分からないところを教えているというだけです。学校が本来保証すべきことは無償でやりたいという思いから、授業料の負担はなしでやっています。
これは別に被災の有無にかかわらずやっています。その代わり、とはいえ、運営にはかなりお金もかかりますし、コストもかかるので、授業料としては頂かないですけど、一部活動に共感した保護者の方から、TEDICという団体の会員として支えてもらっています。そういうかたちでお金を頂いたりしています。
主な収入は、そういう会員、賛助会員とか正会員とかいろいろあるんですけれども、そういう会費収入と、あとは寄付です。あとは一部助成金。そういうかたちで、何とか運営を続けている状況です。ぎりぎり僕自身も何とかお給料を頂いて活動できています。同様のモデルを、東京都と福島県でも展開をしているというのが今のTEDICになります。
サークルの雰囲気はこんな感じです。みんなで楽しくゲームをやったりしています。知っている人もいるかもしれないですね。放課後教室はこういうかたちです。本当に小学生と一緒にマンツーマンでお勉強したり、少人数で教えています。手前側にいるのは小学生なんですけど、奥のほうは中学生だったりして、それぞれ求めているものが違います。
単に居場所として利用してくれてもいいんだよ
単純にここに勉強、宿題を教えてほしくて来ている子もいれば、どちらかというと相談相手が欲しかったり、純粋に話したいという思いで来ている子供たちもいます。そういう欲求を一つ一つボランティアが拾って、目の前の子供にとって何がベストなのかを判断しながら活動をしています。
これはもうみんな卒業してしまったのですが、うちのかわいい生徒たちです。だいぶいろいろなことをやらかしているんですけど、うちのかわいい生徒です。残念ながら、いろいろあって高校に行けなかった子たちもいますけど、僕にとっては自分の教え子たちです。今でもこういう卒業生たちが授業の現場を訪れて、後輩たちに「おい、おまえらちゃんと勉強やれよ。そんな遊んでるんじゃねえぞ、こら」みたいな、ちょっと気性は荒いんですけど、そういうことを言ってサポートしてくれたりしています。
僕は名前が「優(ゆう)」というのですが、「優君、これ、差し入れで持ってきたから」と言って、飲みかけのアクエリアスを3本ぐらい持ってきてくれたりとか、そういうことをします。すごくかわいいんです。そういうかたちで活動をずっと続けています。
こういう卒業生たちが今後大人になって、今度は自分たちの後輩を支える側に回っていく。さっきの枠組みの中でそういう循環が生まれていけば、僕がずっと「どうしたらいいのかな」と思っていた学校での葛藤みたいなところが、もしかしたら解消されていくのかもしれないと少し思っています。
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