もくじ
プロジェクト結 長尾彰Part9
長尾さんの呼びかけで集まったプロジェクト結のメンバーは、プロボノで構成されています。「やりたい人が、できることを、できるだけ」という運営をしていますが、そのように柔軟な組織運営には利点が多い反面、欠点もあります。メンバーがこれまで経験したことのない組織には、今までにない課題があるのです。
時間と労力をかけて合意形成をしています
ただし、メリットはデメリットといつも表裏一体です。課題もあります。徹底した熟議で意思決定をしている分、とても時間がかかります。コストがかかります。時間のコスト、お金のコスト、物理的なコスト、精神的なコスト。コストがかかります。話し合って決めるのはとても大変なんです。みんなで着地点を決めるとか、みんなで合意をするとか、合意形成をするというのは割と大変です。
きちんと自分の意見を言う、きちんと相手の意見を聞くということが訓練されていないと、合意形成は上手にできないのです。僕らは最初、このプロジェクト結を始めたころはそれが上手にできなくて、ぶつかってばかり、衝突してばかりいました。最近はようやく熟議、話し合うこと、対話することが上手になってきましたが、それでもやっぱり時間がかかるのです。
「やりたい人ができることをできるだけ」というのも温度差が生まれます。特に最後の「できるだけ」というところ。「僕は限界以上に、できるだけやるんだ」というスタンスの人もいれば、「自分のできる範囲で、できるだけやる」という人もいる。当然温度差が生まれます。僕みたいな熱湯の人もいれば、できるだけというぬるま湯の人もいる。どちらが悪いということではなくて、そこに温度差が発生します。実はこの温度差がエネルギーを生むのですが、それはまた次の機会、いつかの機会に話したいと思います。
「出入り自由」ということになると、「『人』に依存する」とありますけれど、仕事が人に集まってくるのです。出入り自由で、ちょっと2カ月やめます。2カ月やめた人がやっていた仕事は誰がやるかといったら、当然残った人に回ってきます。誰かのところに仕事がたくさん集まってしまいます。これは本来、組織運営をするときにはよろしくないことなのです。人に依存しないで、きちんとそれをシステムで解決できればいいのですが。今のわれわれの課題は、まだまだ人に依存をする状態が続いています。
被災者からではなく、支援者から頼られるのは困りものです
「シーズよりニーズ」とあります。頼まれたことをやるだけだと簡単なのですが、賛同者や賛同団体、それから東京にたくさんネットワークがあると、こういうことをしたいのですというマッチングに手間がかかります。例えば、今日も午前中やっていた、山形のサクランボを小学校に配るという活動も、大変なのです。
「受け取りたい」「これが欲しい」と言ってくれる小学校を61校の中から何校か探さなければいけない。すべての校長先生や教育委員会を経由して、給食で出しますから安全かどうかという確認をしなければいけないし、不公平がないようにしなければいけない。こういうことのマッチング。やりたいこととやってほしいことを上手に結ぶこと、くっつけるにはコストがかかります。コストというのは、苦労がかかりますということ。丁寧にやればやるほど大変な思いをする人が増えます。
「トップダウンでもなく、ボトムアップでもなく」というのは、みんな慣れないのです。自分で考えて自分でやってごらんということは普段あまりしていません。特に社会人になって仕事をしていると、僕は理事長ですから、「理事長がちゃんと決めてくれないと困ります」というマインドになると、僕がいないと何も動かなくなってしまう。でも、それだと組織が続かないのです。でも、なかなか慣れないです。
「緩やかなネットワーク」「依存する」と書いてあります。この緩やかなネットワークも、結だったら何とかしてくれるだろうと。頼りにされるというとすごく聞こえはいいですけれど、石巻の小・中学校のことだったら結にお願いすれば何とかしてくれるだろうという支援者が増えます。
「被災者」から、結だったら何とかしてくれる、と思ってもらうのは、ありがたいことなのです。ただ、支援する側の人が、「石巻で子供のことといったらプロジェクト結だから、ここにランドセルが1,000個あるので、石巻の子供たちに届けてほしいんですけど、届けてもらえますか」なんていうことをお願いされるのは、依存されている証拠なのです。そういった状況も起こったりします。
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