もくじ
2013年7月9日 プロジェクト結 長尾彰Part2
普段はチームビルディングを仕事にしている長尾さんが、なぜ東日本大震災の復興支援活動を始めたのでしょうか。それは、誰かに任せるのではなく、自分たちで、できることは自分たちで取り組む、そして、誰かを支えるためのシステムを、自分たち市民が持っておく。そのために熟議をする。長尾さんの活動のキーワードから復興支援に取り組む理由が見えてきます。
私の活動、3つのキーワード
スライドの一番下に「社会的自立と社会的包摂」「熟議」「学校教育」というキーワードが並んでいます。ポイントを絞ってお話しをします。僕がなぜこういうプロジェクト結のような活動をしたり、たくさんのNPOをやったりしているのかという根底にある思いは、誰かに任せたままで自分の人生を送りたくないと思っているのです。
例えば、「税金払うから、その代わりに行政はサービスをしてくれ」という考えの人になりたくないのです。納税は日本人の義務ですが、その「義務」という意味が、「税金を払う代わりに僕ができないことを代わりに役人さんにやってもらう」と思いたいのです。だから義務なのだと。
国を良くするのは政治家の仕事、石巻市を良くするのは政治家の仕事、市長さんの仕事。もちろんそれもあるけれども、そこに住んでいる市民が活動すること。市民が暮らしているわけですから、市民が自立していくことがすごく大事だと思っています。誰かに任せるのはもうやめて、自分たちができることはどんどん自分たちでやっていこう。社会的自立というのは、そんな意味合いです。
誰かを支える仕組みをつくりだす
「社会的包摂」、あまり聞いたことがないかもしれません。ググってみてください。この社会的包摂というのが、ある部分ではプロジェクト結が目指していることです。もう少し詳しく話をすると、社会的包摂というのは、行政には行政にしかできないことがあります。民間企業には民間企業にしかできないことがあります。
例えば、行政にしかできないこと。これは公平性を担保すること。すべての市民に公平に物が行き渡るようにいい仕組みをつくるというのは行政にしかできないこと。民間企業は、採算が取れないことはなかなかできないです。収支がきちんと取れるもの、もうかるものをしないと企業はつぶれていきます。
企業にもできないこと、行政にもできないことがあります。その企業にもできないことや行政にもできないことは、われわれ市民がやっていきましょう、そんな考え方です。誰かが誰かを支えるための仕組みを市民の側が持っておくという、社会的包摂というのはそんな意味です。
ごみ置き場に、燃えるごみの日に不燃ごみが出してあった。役所の環境課に電話して、「うちの近所のごみ捨て場に不燃ごみが置いてあるので、持っていってくれませんか」と言うことではなくて、自分たちで話し合って、自分のできることをどんどんやる。
不燃ごみだったら自分でごみ処理工場に持ち込むとか、自分たちで行動を起こせるようになること。「自治と参加」という言葉があるのですが、自治と参加をしていくことがすごく大事だと思っています。
大切なのは、みんなで話し合って決めることです。
少数意見を反映させる「熟議」という方法
「熟議」という言葉、これも聞き慣れないかもしれません。「熟慮して討議する」という言葉の略です。英語では、「deliberation」と言ったりします。
日本の民主主義のかたちは、多数決でものを決める民主主義です。多数決で決めることにもとてもいいことがあります。多数派の意見が採りやすくなる、民意が分かりやすくなる、これは多数決のいいところ。でも、一方で少数意見を持っている人、社会的な弱者、マイノリティーの意見はなかなか通らなくなっていきます。多数決と熟議、これは両方大事。みんなでちゃんと話し合うことと、みんなの声を生かすことがすごく大事です。
3年前に民主党政権に代わったときに、文部科学省が「熟議」というものを学校運営に取り入れていきましょう、教育行政に取り入れていきましょうということで、「熟議カケアイ」というシステムを始めました。
今までは教育の仕組みは、中央教育審議会というところと役人たちがいろいろなものを考えて、「じゃあ、学校はこういうことをしましょうね」となっていました。大学も同じ。大学の設置基準を決めるときには、その当事者が集まって話をすることはなかった。
それから、小学校や中学校も同じ。保護者や先生たちが国に対して何かを物申すという仕組みそのものがなかった。それを変えましょうということで、熟議という取り組みを始めました。この話をするとすごく長くなってしまうので、興味がある方は、熟議カケアイ、「カケアイ」は片仮名です。検索すると出てきます。その熟議カケアイのファシリテーターをしていたりしました。みんなで話し合って物事を決めることをとても大事にしたいと思っています。
そして普段やっていること
もともと僕は体育の教員をやっていて、専門が野外教育だったので、普段何をしているかというと、これは何をしているところが分かりますか。高さが6メートルぐらいある壁を、道具を使わずに、チームで反対側に乗り越えています。「プロジェクトアドベンチャー」なんて名前が付いています。
宮城県は今から15年ぐらい前に、県の単位で、すべての小中学校の先生がこのプログラムを体験しています。一部の先生たちが有志で、みやぎアドベンチャープログラム、「MAP」と呼んでいたりするのですが、このプログラムをやっています。花山青少年自然の家とかで林間学校に行ったことのある人は、こういうものを体験したことがあるかもしれません。これを企業にやったりすることで、チームづくりをすることを仕事にしています。
あとは、子供たちとこんなふうにワークショップ型の授業をやったりすることもあるし、これはとある会社の「経営方針をつくる」という合宿に呼ばれて、ファシリテーション、経営方針をつくるためのお手伝いをしています。
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