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2013年6月25日 ピースボート災害ボランティアセンター 小林深吾 Part4
東日本大震災後、石巻へ派遣され災害復興活動に従事したピースボートの小林さん。ピースボートは人と人とのつながりから世界を見ることを得意としているそうです。小林さん自身も、スタッフとして旅を続ける中で、人間を通して世界を見ることを実感します。
大事なことは何を通して世界を見るかです
いろんな国に行くのですが、今回のテーマは「世界」ですけど、世界ってすごく漠然としていますよね。それは誰なんだ、という話ですよね。日本以外はほぼ世界なのか、もしくは日本も含めて世界ですよね。となったときに分かりづらいので、僕はあまりピンとこなくて。「世界」というか、「人」かなと思っています。
この赤いスカーフを巻いているおじいさんはヨルダンの人です。ヨルダンに行ったときにホームステイをする機会があって、このおじいさんの所に泊めてもらいました。アラブの人たちは、すごくおもてなしをしてくれるのです。
おもてなしをするのは基本的に男性のお父さんで、一家の長です。
そのお父さんがドンと座って、大皿で大きな料理が出てきて、その周りをお客さんが囲んで「まあ、食え食え食え」とか言って。台所では、後ろのほうでお母さんとか女性の方たちが料理を一生懸命作っているみたいな雰囲気なのです。そのお父さんは、本当にお客さんをおもてなしして、これからどうするのかとか、どこに行くんだとか、その足はあるのかとか、危なくないのかとか、楽しんでいるのかとか、そういうのをすごく気に掛けてくれたおじいさんでした。
ヨルダンという国はパレスチナから難民になった人たちがたくさんいる国です。人によっては40~50年という難民の生活をしています。でも、想像するような難民のテントみたいなかたちではなくて、難民の人たちが住む場所が決まっていて、そこにコンクリートの家を建てています。このおじいさんも、もう50年以上自分の生まれ育った所から逃げて、ヨルダンという土地で生活している難民の一世の人だったのです。
僕が思うのは、パレスチナと聞いてもそれは遠い世界の話です。ニュースでやっているような話なんです。でも、このおじいちゃんと出会った後、パレスチナと聞くと、このおじいちゃんが思い浮かぶのです。大丈夫かなとか。今はパレスチナにこの人は住んでいないけれど、その親戚とか家族とかは大丈夫かなと思ったりします。なので、世界というよりも、何を通してその世界を見るのかということのほうが、もしかしたら大事なのかなと思っていたりします。
ピースボートの得意なことが災害支援に似ています
ほかのスタッフが言えば全然違うことを挙げると思いますが、僕が思うに、ピースボートの得意なところは、多くの人たちと協働することです。船内には1,000人ぐらいの人たちが乗っています。
ピースボートはスタッフだけで船の運営をするわけではないのです。参加して乗船しているお客さんも、一緒に船内のイベントを作ったり、企画を作ったりします。例えば毎日の新聞を発行したり、こういった音響をセットしたりということも、船に乗っている人たちと一緒に協同して作っていきます。
あとは、出会いを作って人と人をつなげることが得意です。何か難しいことを、「世界の情勢がこうだ」ということを、ニュースとか新聞というかたちで伝えるよりも、その現場に行ってその人に出会ってみるとか、そこの人に出会ってみることを大事にしています。つまりは小さな実感。自分の体験とか、自分の出会いとか、自分の感覚ということを、そこから先にある私の問題・課題であったり、将来であったり目の前にいる人の今置かれている状況を考えられるような交流のプログラムになっています。
あと得意なことといえば、1,000人規模のオペレーションです。1,000人ぐらいの人を動かすことを得意にしていると思います。船が港に着くと、みんな行動しなければいけません。自由行動する人もいますが。バスを何台手配して、何人ぐらいがここに行って、どういう行程で船に帰ってくるのか、ということをやっています。この部分はすごく災害支援に似ているところかもしれないですけど、そういったことを得意としている団体なのかなと、僕は思っています。
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