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2013年6月18日 にじいろクレヨン 柴田滋紀 Part7
東日本大震災後、子供たちの心のケアをするため「にじいろクレヨン」の活動を始めた柴田さん。2年半にじいろクレヨンの活動を続けたことで、遊び場に来る子供たちは笑顔を見せるようになったばかりか、他人の話を聞く、自分のことを話すなど、大きく変わってきました。
「今日、嫌なことが2つあったんだ」
2つ目の、「人の話が聞けるようになる」。最初の避難所のころは、何を言っても人の話が聞けない状況で、もうどうしようもなかったです。今は言うことを聞くようになっています。
親御さんを亡くしているかもしれないし、兄弟を亡くしているかもしれないし。どこまで踏み込んでいいのか全然分からないので。こちらとしてもその辺はすごくデリケートになって、聞かないようにしています。そうすると、信頼関係ができてくると向こうから自分の話をしてくれます。
3番目の、「自ら家庭や学校生活の話をする」。特にこちらとしては、その子供たちがどういう出来事があったか分からないので、うかつに聞けないのです。
あるエピソードを言いますと、いま中学2年生になった男の子です。震災のとき5年生でしたが、6年生になったころのことです。私はにじいろクレヨンの活動をやって、トイレに行きました。そしたら男の子が後からついてきて、一緒におしっこをしていたのです。そしたらその男の子が、突然「今日嫌なことあったんだ。2つあったんだ」と話かけてきました。
一個は友達とけんかしたか何かで「嫌なことあったんだ」って。もう一個が、「今日お父さんが見つかったんだ」と。行方不明だったみたいです。ずっと見つからない状態でいたのが、遺体が見つかったのがその日だったそうです。こっちは何も聞いていないわけですが、それを私にしゃべってくれて。「おお、そうなんだ。ふうん」といって、とにかく聞いてあげることしかできなかったんだけれども。そういうことを、自分のほうからしゃべってくれるようになりました。そういうのはやはり信頼関係なんだと思います。
子供だけでなく親にも変化が
4つ目は「落ち着きが見られる」。遊ぶときにまず座れる。初めの頃は、座っていられなかったのですが、今は遊ぶときには人並みに座っていられるようになっています。
5つ目の「ありのままの姿を見せるようになった」というのは、家とか学校ではすごくまじめな顔を装っていたりする子が、にじいろに来るとばーっと本当の自分を出している節があります。多分それは、「にじいろは出していいよ」という場をつくっているからなおさらなんだと思います。本当の自分なのかどうか分からないですけど、違った一面もにじいろクレヨンにいるときは出しているような気がします。
そして、子供だけではなく、親御さんのも変わったという気がしています。最初のころは、親御さんにあいさつをしても無視されたり、「こんにちは」と言っても、「は? 何この人たち」みたいな感じで見られたことがあります。そんなお母さんたちだったのですが、ずっとあいさつをしてお話を聞くようになったら、最初のころはこういうキツネみたいな目でいたのが、今は本当ににこにこされているような気がします。
もっと変化としては、にじいろクレヨンの活動に親御さんが少し入ってくれて、一緒に見守りをしてくれるようになっています。親御さんだけではなくて地域の方々、仮設に住んでいる住民の方々が、にじいろに対して、最初のころは「うるせえ」とか「何やっているんだ」という感じで言っていたのが、今は一緒に子供を見守ってくれたり、「そこ危ないよ」とアドバイスをしたり、子供たちのために動いてくれるようになりました。
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