もくじ
2013年8月3日 河北新報 武田真一 Part7
東日本大震災後の石巻に地域包括支援センターがオープンしました。被災地で始まった取り組みですが、それを軌道に乗せることで、同じ構造を抱えた地域の課題解決につながります。このような、日本の課題を先取りするプロジェクトが、被災地にあることを知ることから「わがこと意識」が生まれるのです。
被災地で始まった地域包括支援センター
医療の分野で言うと、地域包括センターが先日、石巻に東北で初めてオープンしました。保健と福祉と介護と医療を一括して見ていけるような地域を目指していきましょうという取り組みです。うまくいくかどうかは分かりませんが、そういう試みがこの被災地から始まったことに意義があります。
具合の悪い人は病院に来てください、そうすれば診てあげます、という医療では、被災地の人たちは救えない。それが分かってきた。病院に通うのにタクシーで5千円かけないと通えませんという人たちが山のようにいる。そういう人たちを支えるために送迎のボランティアも活動している。
それはそれでよろしいけれども、「具合が悪いです」と訴えている人、「具合が悪くなりかけています」という人のところに医療のほうから歩み寄っていって、ケアすることが求められているのではないか、保健や福祉と一緒になりながら、ケアしていく必要があるのではないか、ということです。
日本の課題を先取りした被災地の取り組み
そういう包括的なケアの仕組みが、どうやら被災地だけではなく、現代の日本の社会では大切になりつつあるということが分かっている。被災地発の取り組みを何とか軌道に乗せていきましょう。実はそれは10年後、20年後に全国どこでも必要になる医療のあり方として注目されています。
被災地で始まった、そういう取り組みが軌道に乗るのであれば、全国の同じ構造を抱える地域で、解決の道につながるのではないか。先ほど言ったことの具体例は、そういうことです。
日本の課題を先取りするプロジェクトが実はここにある。自分たちの地域、国の未来は、被災地の今にかかっているという視点に立って、地方、地域から社会を問い、発信していくこと。我々報道の仕事も、そこが一番肝心なことだと、及ばずながら肝に命じてやっています。
震災後の被災地のそばで生きる皆さん、学ぶ皆さん、被災した地域の実情に日々触れている皆さんにとっても、そんな視点を根底に据えると、やはり役割意識というか、わがこと意識が、非常に高まっていくのではないかと思います。
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