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2013年8月3日 河北新報 武田真一 Part5
東日本大震災の復興過程で、震災前には見過ごされていた課題が露わとなりました。災害では、ほとんどの場合、「弱い」ところに大きな被害が出ます。震災までは地域社会から隔絶され、孤立していた、見えない「弱者」に支援の手が差し延べられたことも、今回の震災の特徴といえます。
「僕は震災で救われた」という社会
ちょっと話が飛びますが、もう一つ、震災をとらえる視点として大切なことをお話しします。被災地になった私たち、宮城、東北が押さえておくべきことがあるということ、地方及び地域を直視して、そこから出発しましょうということです。
私も復興ボランティア学講座を、たった2回でしたが、聴講させていただきました。そのうちの1回は、「TEDIC」の門馬優さんの講座で、お話の中で具体的に共感したことがありました。
学習支援、遊び場、居場所支援で活動しているうちに、家庭崩壊で閉じこもっていた子どもが、門馬さんたちにアクセスすることで「僕は震災で救われた」という言葉を吐いたというエピソードです。地域社会の中で隔絶されたところで孤立していた人に初めて支援の手が入ったのが、実は震災の機会だったということです。
「弱い」ところに向き合う機会となった震災
「震災で僕は実は救われたんです」と言わせた社会というのは、何なんだ、と。震災以前から、支援の活動は必要とされていたことではありませんか、と門馬さんはその講座で話していました。非常に共感した部分であり、我々もずっと考えているところです。
まさしく、震災以前からあった問題や課題の確認、掘り下げ、発見こそが求められていて、震災後に行われている様々な復興活動、支援活動というのは、震災以前に既に課題になっていながら手がつけられなかったこと、放置されていたこと、そういうものに向き合う作業の仕事、役割になっています。
先ほどの門馬さんの例で言えば、教育になりますけども、医療もしかり、コミュニティの維持という問題もしかり、です。もともと格差や差別の構造に置かれていた地域、人たちに目を向けること。それが震災復興であり、復旧であるということです。
そもそも、今回もそうですけれども、災害というのは、ほとんどのケースで、普段目配せが行き届いていないところ、弱いところに大きな被害が出ます。
「地方の中の地方」と言ってもいいような、沿岸部の小さな集落が壊滅的な被害を受けた、発展軸の内陸から離れていた沿岸部の過疎高齢化で課題を背負っていた地域が、大きな被害を受けたことが、今回の震災の特徴だと思います。
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