もくじ
2013年8月3日 河北新報 武田真一 Part10
東日本大震災を伝えることは震災だけの問題ではありません。地域の未来を考える、仕事の意味を考える、そうしたとき「震災」を思い起こすことによって、何かが変わるはずです。隣人、地域への共感と想像力を持って行動することが、東日本大震災を超えて震災を生きることなのです。
共感と想像力が世界を変える
震災の記録、伝承、復興というのは、震災だけの問題ではありません。そこにあるのは、地域や地方の未来をどうするのかという永遠のテーマです。格差の構造とか支配の構造とか差別の構造とか、そういうものを超えて地域の人たちが豊かに暮らせる社会をどうつくっていくのか。それを考え続けることが、震災と向き合うこと、震災を生きるということです。
大学を卒業して何がしかの職に就いたとき、ないしは何がしかの活動を始めたとき、震災復興のことを少しでもいいから思い返してみる。自分が携わる仕事の意味はちょっぴり変わってくるはずです。壁に突き当たった時には、力になるんだろうと思います。
その際に基本になるのは、隣人、地域への共感です。その延長上にある日本全体、あるいは遠い世界への想像力です。共感と想像力に基づいて、喜び、怒り、悲しみ、そういうものを共有することで始まる行動を、大切にしていきましょうということです。
新聞には行動のヒントが載っている
最後は少し宣伝になります。私たちが震災報道を続ける中、読者から寄せられた声で最もうれしかった言葉があります。それは「新聞はニュースだけが載っているものだと思っていましたが、違うことが分かりました」。これは複数寄せられています。
新聞の中には当然、どこどこで何がおきましたということが書いてありますけれども、それだけではない。先ほど紹介したように、いろんな人たちの素敵な言葉が載っています。いろんな人たちの生き方、言葉、喜怒哀楽、それが載っています。震災によって、地域に生きる人たち、普通に生きる人たち、日常に責任を持って暮らす人たちの声と姿をきちんと紹介していこうよ、という原点が確かめられ、我々は被災者を中心に丁寧にそれらを記録して掲載を続けています。それが読者から評価されています。
情報を求めるだけだったら新聞をとらなくても大丈夫ですが、先ほどから言っている隣人への共感、地域への共感をもとにいろいろなことを考えて、行動していきましょうということになると、そのための大切なヒントになることが新聞には載っています。震災後を生きるためのヒントを探そうと思った場合は新聞を手にとってください。私たちもそういう期待に応えるように、紙面作りを今後も続けてまいります。
冒頭に言ったように、非常に観念的で、理屈っぽい話になったと思いますけど、皆さんがこれから学生生活、それから社会人として生きていく場合の参考に少しでもなったのであれば幸いです。ありがとうございました。
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