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2013年8月3日 河北新報 武田真一 Part1
宮城県の地方紙「河北新報」の編集局次長の武田さん。2013年復興ボランティア学の締めくくりのシンポジウムで基調講演をいただきました。テーマは「震災後を生きる〜わがこと意識とボランティア」です。講演の冒頭では、震災の風化について問題提起をしています。
私なりに受け止めた復興ボランティア学
皆さん、こんにちは、ご紹介いただきました、河北新報社の編集局の武田と申します。私はボランティアのことは詳しく知る者ではありません。この場で役に立つ話ができるような立場ではないわけですが、私に求められているのは、物事を捉えたり、考えたりする時の整理するための視点、それを提示してほしいということでしょう。被災地で学び、暮らしている皆さんの一歩に繋がるような話ができればと思います。
復興ボランティア学講座は4月からずっと続けてられています。その講座の説明文書を、講演を依頼されてあらためて読んでみたら、講座の目標が三つ挙げられていました。一つは「震災の教訓を他人に伝えることができるようになる」。二つめは「地域の復興に問題意識を持って、自ら進んで復興に貢献する意欲を持てようになる」。それから三つめは「ボランティア活動に参加し、地域貢献できるようになる」です。私はこれを、少し読みかえてみたいと思います。
私なりの解釈ですが、どうやら「震災ときちんと向き合って生きていきましょう」「震災と復興を『わがこと』として受け止めて、考えて行動し、生きていきましょう」ということであり、「最大被災地石巻で暮らす一人一人が、震災後をどう生きるかを見つめていきましょう」ということ。三つの目標はそういう呼びかけだったと思います。
ボランティア活動の根っこにあるものとは
それで、本日の話のタイトルも、講座が目指すところにあわせて、「震災後を生きる」という、ぼんやりしたものに設定させていただきました。少し観念的で、理屈っぽくて、ゆるい話になってしまいます。具体的に現地で活動されている方々の実践的でためになるお話をずっと聞かれてきた皆さんにとっては、物足りない話になってしまうかもしれません。
しかし、震災復興に求められる視点というものを一緒に考える機会にしてほしい。ボランティア活動の根っこにあるものって何なんだろう、地域で生きるということはどういうことなんだろうということに、意識を向ける機会になれば幸いです。一時間弱お付き合いください。
震災から2年5カ月になろうとしているこの時点で一番考えなければいけないこと。それはやはり、震災が風化してしまうこと、忘れ去られてしまうこと、思い起こす人が少なくなってしまうこと、震災に関わって行動する人が少なくなってしまうこと、それに違いありません。
「被災地を忘れない」という言葉は、よく繰り返されますし、我々も紙面で「震災を風化させてはならない」、そう強調しています。とても当たり前で大切な呼びかけですけれども、こういう誰も反対しない呼びかけは意外にすうーっと通り過ぎてしまいます。
「震災をもう忘れてしまおう」という人はいません。「震災はもう風化してもいいんじゃないか」という人もいません。誰もが深い考えもなく「そうだよね」と言ってしまう言葉はやはり流されやすい。「風化させない」ということは、どういうことなんだろう、何のためなんだろう、誰のためなんだろう。そこのところをやはり少し掘り下げて考える必要があるんだと思います。
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