13.このまちには学びとチャンスがある(2013年 ISHINOMAKI2.0)

ISHINOMAKI2.0

2013年5月28日 ISHINOMAKI2.0 松村豪太 Part13

東日本大震災を契機に面白い街にリ・デザインしようという想いから、ISHINOMAKI2.0の活動を始めた松村さん。日本のどこよりもまれな、学びの機会とチャンスがある町だと言っています。石巻には都会でも滅多に出会えない特別な人たちが集まっている今こそ、外へ出れば、多くの人とつながり、学びとチャンスを手に入れることができるのです。

この町には特別な存在が、びっくりするぐらい奇跡的に集まっている

学びの機会とチャンスがある町

皆さんに伝えたいのは、本当にこの町はほかのどこより、日本の中のどこよりも、あるいは世界中の中でも稀有(けう)なほど、学びの機会とチャンスがある町だということです。ここにも既に何名かの方が復興ボランティア学に登壇しています。

そのほかにも実はさまざまな、「意識が高い」というのは使い古されたつまらない言葉で使いたくないのですが、何か世の中のためにできることをしたいとか、あるいは非常に事務処理能力やコミュニケーション能力が高かったり、すごく行動力のある素晴らしい人間がびっくりするぐらい石巻に来ています。そういう人間の密度が、多分東京よりもこの町は高いです。

そういう方たちは当たり前の存在ではないのです。特別な存在が、びっくりするぐらい奇跡的にこの町に集まっているのです。あるいは、もともと町にいた方でも、震災を契機に新しいつながりをつくろうとしたり。例えば浜のほうで、それまで浜というのは町なか以上に封建的なところがあって、隣の浜の人と仲が悪いようなところがありました。

そこを「津波」という大きなショックがあって、若い25~26歳の人間が、隣の浜に「やり方教えてください」と歩き回るようになりました。そうすると、今までちょっといがみ合っていた集落も、25~26歳の若造が来たら「そいつはちょっとかわいいから教えてやるか」ということで、新しくつながりができています。

そういうさまざまな日本の中での新しい挑戦というのが、実はこの町では行われています。これに触れないのは非常にもったいないというか、あり得ないと僕は思うのです。

ぜひ、先ほどの「こんな教室」というのは撤回しますけれども、大学の中だけではなくて、町の外に新しい出会いとか、先進的な、東京でも経験できないような面白い人間がたくさんあふれています。そういったところに出ていって、話して、体験して学ぶべきだと思います。それが冒頭に言った、「皆さんは生徒ではなく学生なんだ」ということです。

もちろん単位も大事です、アルバイトも大事だと思います。単位を取るだけの勉強をして、最低限暮らせるだけの収入を得るためのアルバイトをして、という必要な時間もあります。町に出て、そういった単位やアルバイトの時給1,000円以上の経験が、ゴロゴロ転がっているのがこの町なのです。

ぜひとも外に出て、魚谷さんだったり、JENの西村さんだったち、来週は西本健太朗君という神戸から来た人間がこの場所に立ちますけれども、そういった人間と語り合ってみてください、出会ってみてください。とても本当に貴重な時間、貴重な空間に皆さんはいるという、本当に恵まれた町にいるということをあらためて実感してください。

震災があったからこそ、大きく変わるチャンスを得た

閉塞感を打破したい

最後に石巻という町。東日本大震災で大変な、浸水面積と人的犠牲者が数字上最大の町です。この場には石巻の住民が5分の1ぐらいいましたが、その方なら、このような経験をする前から、ご存じだと思います。言ってみれば、衰退の一途をたどる町といいますか、町の中は空洞化していて、シャッター通りが広がっていました。

確かにちょっとあけぼの、イオンのほうはにぎわっているけれども、あれだって少し前の中里と一緒です。「焼き畑農業」と僕は呼んでいますが、10年後には間違いなく誰も見向きもしなくなって、次はこの専修大学の周りか日赤辺りが同じように開発されて、同じように忘れ去られていくでしょう。

そういった状態を、言ってみれば「あきらめ」といいますか、しょうがないと思ってしまっていた。それは僕もです。そういった町だったと思います。それが震災という契機があったからこそ、外から面白い方がたくさん来て、新しい、自分たちにとって当たり前だと思っていることが「これ変わっていますね」とかいわれて、外からの視点によって元気づけられているのもこの町です。

もちろん、まだまだ大変な、仮設住宅から出られない方がいるのは事実ですけれども、その一方で、震災前以上に「ちょっと頑張ってみようか」と思っている人はいるのです。

それは石巻だけではないと思います。閉塞(へいそく)感に包まれていたというのは、バブル経済崩壊後、あるいは高度経済成長が終わったあとの日本というこの国自体、もう何か、やることはやり尽くされているのです。何か頑張ろうと思っても、だいたいのものがつくられています。

もちろん、もしかしたら違うのかもしれないけれど、車も随分便利になっているし、携帯電話も誰でも持っている世の中になっているし、ちょっと思い付くような、ドラえもんが考えるようなアイデアというのはだいぶもう実現してしまっている。

もう自分たちにやることはないじゃないか。自分たちは歯車として、朝起きて、会社に行って、ご飯を食べて、帰って寝る。そういうルーティンワークをするしかないのではないかと感じてしまっている人が多いのもこの国だと思います。一方で、東南アジアとかはすごく元気ですよね。東南アジアとかと同じように、この町というのは、幸いと言っては絶対いけないのですが、やることがたくさんあるのです。

皆さんも家から外に出てみると、大学から外に出てみると、やることが非常にあります。それはとても貴重な資源です。ぜひこういう閉塞(へいそく)感に包まれた日本、もちろん石巻もですけれども、震災を契機に変えていく、突破口を開けてやろうという思いでわれわれは活動しています。

オーバーに聞こえますけれども、本当にそういう思いで活動しています。ぜひ、関心を持ってくださいましたら、石巻のアイトピア「IRORI」という所がわれわれの拠点ですので、遊びに来てください。どうもありがとうございました。(終了)

動画 Part13(ISHINOMAKI2.0 松村豪太)

やっさん

東日本大震災の仮設住宅支援、復興起業家育成に関わってきました。大学では、震災復興を考える講座やワークショップを実施しています。ここでは、復興ボランティア学講座の記録をまてめて、公開しています。

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やっさん

東日本大震災の仮設住宅支援や復興起業家育成に10年間携わってきました。現在は震災復興に関する講座やワークショップを実施しています。ここでは、復興ボランティア学講座の記録をまとめて公開しています。

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