9.課題だらけの住民組織の運営(2013年 石巻ふるさと復興協議会)

石巻ふるさと復興協議会

2013年6月4日 石巻ふるさと復興協議会 西本健太朗Part9

震災後、関西から石巻へ来て、仮設住宅の支援活動をしていた西本さん。新しく関わった仮設住宅自治連合会は、住民主体の活動組織として、軌道に乗りつつありました。しかし、仮設という一時的な住居の住民組織ならではの課題として、人材不足や資金不足、それぞれの自治体の維持など悩み多い日々を続けていました。

住民が自発的に活動しているのが自治連のいいところです

自治連の特徴

自治連合推進会の良いところとして挙げられるのが、まず被災地において住民さんが主体的に活動をしているという珍しい取り組みです。ほかの地域で同じような取り組みをやっているところはありません。

例えば、陸前高田とかでは、仮設の住民さん同士で集まって連絡会とかをやったりしているそうですが、それは住民さんが呼び掛けるのではなくて、いろいろな支援団体さんが呼び掛けて集まるのだそうです。自分たちで呼び掛けて、自分たちで集まって、自分たちで解決していこうと取り組んでいるのは、この自治連合推進会だけです。

先ほど「窓口機能」と申し上げましたけれど、仮設の住民自身がそういう窓口機能を担っています。基本的に市役所や行政を通したり、外からの声にいろいろな支援団体さんが応じて、それを各団地で実施するというのが普通になっていました。いままでコーディネートとか調整役というのは、住民が担えていない状況があったものを、それを曲がりなりにも担ってきています。いろいろな相談がどんどん増えてきて、頼られるようになってきた、というのが自治連合の実感としてあります。

復興公営住宅は、今年の夏から仮登録が始まります。いまは借り上げの復興住宅について入居が始まっています。本格的に市営住宅のような大きな建物が建つ、この夏から3~4年ぐらいをかけて皆さん移られていきます。そういう公営住宅への移転が長く続いて、せっかく仮設でちょっと仲良くなってきていても、行った先でまた一からやり直しです。

そこも抽選で入ったり、ばらばらになると思うので、コミュニティー機能を再構築しなければいけない。じゃあ何ができるかというのは、仮設で自治会を運営していた方々がいらっしゃるので、そういった方が公営住宅に行ってそこでの自治会を立ち上げたり、住民同士のルールを決めるというところで、経験した方が大きな役割を果たす可能性があると思います。

それぞれの仮設自治会が、住民組織として継続できるかが課題です

自治連の課題

ただ、課題もたくさん、もう切りがないぐらいあります。まずお金は全然ありません。これはなぜかというと、要は仮設住宅に住まれている被災した方が活動しているので、お金がそんな潤沢にあるわけがないということで困っています。行政さんから特別にお金をいただくとか、そういうのは一切ありません。

ほかの団体さんや、NPOとかと同じように、助成金とか補助金とかそういうものに申請をして、それに採択されれば、何とか頂けるということです。事務所や専従で一日中働く人がいるのであれば、やっぱり給料を出さなければその人も生活やっていかれませんので。そういう部分での資金難というのがすごくあります。

人材不足も本当に今深刻になってきています。自治連合の事務局を担える方というのも、もちろんパソコンとかを使えなければいけません。仮設の自治会長のおっちゃんがパソコンを使いこなしているかというと全然そうではなくて、すごく難しいです。ファイルがどこかに消えたとか、コピーができないとか、よく相談されています。さらに、自治会のリーダー役の方もすごく減ってきているというか、不足しています。

なぜかというと、最初はみんなが一気に仮設に入って、その中で担える方がやっていたのですが。組織とか自治会とかのリーダー役をやれる方は力のある方なので、先に仮設から出ていけるというか、生活再建をする力を持っていることが多いので、会長さんとかから先にいなくなることがあります。その抜けたあとの仮設で、誰が会長さんをやるのかとなったときに、誰も手を挙げなかったりして、せっかく立ち上がった自治会を解散するというケースが、2013年の3月、4月、5月とかで目立ってきています。

最近も、会長さんが仮設から出ていくとか、もう2年も会長をやって疲れたというのでやめて、後に誰もいなくて、自治会が2つ解散することになったという話もありました。何とかそれを押しとどめなければいけないのですが、担える方の育成というか、自分たちでやるという意識の部分を伝えていかなければいけないのですが、すごく難しいです。これはすごく悩んでいます。

組織運営は誰でもできるものではありません

3点目に、組織としての基盤整備。これもすごく課題です。これも同じで、仮設の住民さんや、おっちゃんたちのような組織の運営をされたことのない方々がやっています。なので、組織運営が難しいというか、やってみたら全然立ち行かないというのがあって。自分たちの組織の足元固めというのがすごく必要です。

これは緊急時として、今まで行政の方やいろいろな方に支えられて何とか成り立ってきた活動なのですが、これからは自分たちだけでやっていけるようになるかとか、そうしなければ活動が継続できないことを考えると、すごく急いでやらなければいけません。担い手もいないし、お金もないし、組織の運営も難しいというので、すごく困っています。

ここが住民では、できない部分だと思うのです。住民さんが何とか頑張っても難しい部分だと思います。そういうところを、行政の方にももちろんお願いしたいのですが、支援とかそういう部分でのお手伝いが大事なのかなと思います。

実際にどういう方が中心的になってやっているかというと、朝日新聞の宮城県版に載せていただいたのですが。写真に載っているような方々が事務局の中心になって、今も仮設の会長さんをされている方もいますし、仮設を出てからもこういう活動は大事だというので、もうご自宅に、再建というか修繕でリフォームして戻られているのですが、それでもずっと関わっている方もいます。 

やっさん

東日本大震災の仮設住宅支援、復興起業家育成に関わってきました。大学では、震災復興を考える講座やワークショップを実施しています。ここでは、復興ボランティア学講座の記録をまてめて、公開しています。

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やっさん

東日本大震災の仮設住宅支援や復興起業家育成に10年間携わってきました。現在は震災復興に関する講座やワークショップを実施しています。ここでは、復興ボランティア学講座の記録をまとめて公開しています。

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