8.時間をかけてカーシェアの「ひな形」をつくる

日本カーシェアリング協会

東日本大震災によって多くの住民が車を失った石巻で、カーシェアリング活動を始めた吉澤さん。車の提供先が決まって、テスト的な取り組みが石巻の仮設住宅で始まりました。テストをしながら様々な取り決めを、警察や利用者とすりあわせて進めました。時間をかけて公に認められる「ひな形」を作っていきました。

2013年7月30日 日本カーシェアリング協会 吉澤武彦Part8

はじまりは万石浦仮設住宅から

提供先が決まりました。それから一旦関西に戻って、法人化とか提供の準備をして、翌月の7月に車を持ってきました。最初のユーザーの写真です。僕にとって、これは運命としかいいようのないようなメンバーなんです。一番右側の増田さんは、この万石浦の仮設のカーシェアリングの代表として、いま一番好事例を突っ走ってくれています。いろんな良いカーシェアリングをやっています。

真ん中の人。さっき、仮設連合会っていう話がありましたけれども、この真ん中のおじさんと一緒につくっていったんです。初代会長です。アンケートの時、僕がお願いしたのは、その後ろの方なんですけれども。この方はなんと、途中仕事が忙しくなって、なかなかこのカーシェアリングの取り組みを一緒にできなくなってしまったんです。でも、一緒に始めてくれた増田さんと後藤さんが、いろいろ動いてくれたんです。

カーシェアリングの仕組み

カーシェアリングの仕組みは、まずグループを組んでもらいます。そのグループに代表者も決めていただいて、グループに車を1台無償で貸すっていうふうなかたちです。

全国から寄付いただいた車検付きの中古車に、1年間の保険を付けて、無償でお貸ししています。ただし車には、ガソリン代もかかりますし、春になったら税金もかかるし、2年経ったら車検もかかります。そのへんの経費に関しては、利用者同志で負担していただきます。

あと、その車を使う時のルールですね。予約とか、鍵の管理とか。そういうのは、利用者同士の話し合いで決めていただくことにしています。そのへんのルールを決めるために、最初はテストを必ず2週間やっていただきます。

その中で、利用者は曜日で決めましょうとか、ガソリンは乗る度に満タン返しにしましょうとか、何キロでいくらずつ積立をやりましょうとか、その場所に合ったルールを作ります。1ヵ所1ヵ所、全部オリジナルなんです。そういうふうな自由度を作ってやっています。

時間をかけて誰でもできる形をつくる

テストが始まりました。カーシェアリングのやり方をここでいろいろ決めていきました。やり始めたらやり始めたで、いろいろマスコミが取上げてくださって、そこで初めて、石巻警察署とか宮城県警から連絡があったんです。
僕は事前に、仕組みとかも報告したうえでやってたんです。

でも、メディアが大きく取り上げたので、やっぱりちょっと気になったんでしょうね。もう一回、確認させてほしいと。そこからいろいろ、契約書の内容であったりとか、管理方法であったりとか、そういうのを詰めていきました。

1カ月以上、ずっと僕は県警の交通規制課の係長に毎日電話とFAXでした。その当時の僕の着信ランキング1位は係長やった位です。それくらい細かいところまで、県警と利用者が納得いくまで一緒に丁寧に決めていきました。それは、ひな型を作りたかったんです。だから、公で認められるものを、ここで時間をかけて丁寧に作っていきました。

いま言いましたけれど、僕がプロジェクトを始める時に、大切にしていることは、「ひな型を作る」っていうことなんです。これが一番大切だと思っています。このひな型が、どれだけ精度が高いか、どれだけ美しいかによって、その先の未来がぜんぜん変わってくると思うんです。

逆にそのひな型を、みんながやりたくなるような、やりやすい型ができたら、事業は、いくらでも展開していけるんです。僕自身が全国に展開しようとはあまり思ってないんですけれども、まずそのひな型を作ることが一番の貢献になると思って、石巻で集中してやっています。

やっさん

東日本大震災の仮設住宅支援、復興起業家育成に関わってきました。大学では、震災復興を考える講座やワークショップを実施しています。ここでは、復興ボランティア学講座の記録をまてめて、公開しています。

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やっさん

東日本大震災の仮設住宅支援や復興起業家育成に10年間携わってきました。現在は震災復興に関する講座やワークショップを実施しています。ここでは、復興ボランティア学講座の記録をまとめて公開しています。

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